表現力とは、心の内側からあふれる感情を自分らしい方法で表に現す能力のことだと解釈しています。
但しその力を測るための適当な物差しがないために、自分はどれくらいその力が身についているかどうかは判断しづらいものになっています。
一口に表現力といっても、自分の感情を表現する手段は幾通りもあります。例えば状況を的確に伝える魅力的な文章を書ける人がいたり、言葉ではなく絵やイラスト、写真や動画などでビジュアルに表現できる人もいます。また巧みな会話術を身につけていて上手なコミュニケーションを取れる人もいれば、楽器や身体を通じて心の情景を相手に伝えられる人もいます。
そうした人たちに共通していえることは、自分の思いを的確に伝えたいという強い熱意があることではないでしょうか。私はこの感情がとても大事なのではないかと思っていますし、この感情がこの社会を支える大きな原動力になっているのだと信じています。
苦労して作り上げた事業企画も、人に伝える段階でその内容がわかりにくいものであったり、イメージが沸きにくいものであったりしたなら賛同者は増えません。そうなるとせっかくの苦労が水の泡となってしまいます。そうならないためにも人に伝えるために、全ての人が自分らしい表現方法を身につけることが大切だと認識しています。
人に差し出す小さな名刺一つを取っても、私たちはそこに自分らしさや組織らしさが表現できているかどうかに、もっと気を配るべきだと思っています。そういったことに無頓着な人が美しいまちや社会を作れるとはどうしても思えないのです。
景観を無視して乱立する看板だらけのまちを見る度に、画一化された表現手段しか持たない頭の固い人間たちの愚かさを感じます。こうした感覚が次世代を担う子供たちにも知らず知らずのうちに受け継がれていってしまいます。そんな意味からも、私たちはもっと感性豊かな表現力を身につける努力をすべきなのです。
