佐渡の春は、太鼓の低く響く音とともに、静かに、しかし確かな気配をもって近づいてきます。鬼太鼓の季節です。

 朝の散歩の折、アパートの窓越しにその音を耳にすると、誘われるように外へ足を運びます。ひんやりとした空気の中、面をつけ腰を落とした一行が門付で舞う姿に出会うと、思わず足を止め、見入ってしまいます。その所作は、どこか懐かしく、地元の七夕祭りで舞われる獅子舞を思い起こさせます。太鼓や笛の音は地域が違えど不思議と私の心を揺さぶります。「今年も祭りの季節が来た」と感じるたび、生きていることへの感謝の念が自然と湧き上がってきます。

 幼い子どもが音を頼りに角を曲がり、「もう少し先かな」と胸を弾ませながら進んでいく姿。その先でようやく出会う祭りの一行。あの時の高鳴る気持ちを、いつまでも忘れずにいたいものです。

 郷土芸能は今、少子高齢化の波にさらされ、継承の難しさに直面しています。それでもなお、こうして受け継がれている姿に触れると、胸の奥に温かなものが灯ります。転勤先という見知らぬ土地で出会う祭りは、まるで宝物を見つけたかのような喜びをもたらし、思わず心の中で「みつけた」とつぶやいてしまいます。

このかけがえのない宝物が、これからも失われることなく、未来へと受け継がれていくことを願ってやみません。