1人暮らしの母が最近、車を手放した。
交通手段がなくなることの不便さもあるが自分で決断したようだ。
だからといって、買い物や用事を依頼されるわけでもなく、困っていないという。
病院にはバスで行く、買い物は週に2回移動販売のトラックが近所まで来てくれる。

それでも、心配な私は以前より実家に行く回数が増えている。
実家に行くといつものたわいもない話をしてくる。

子供のころ満州から引き揚げてきた母の両親は生活も苦しく大変だった。ここに嫁いで来てからは嫁姑問題で嫌な思いもいっぱいしたし、お父さんは早く死んじゃうし散々な人生だったと口説く。でもね、子供のためにと思えば頑張れた、孫たちもいい子たちだし幸せだという。気分転換に旅行に誘っても、気を使って疲れるだけだから行きたくない、と母らしい回答が返ってくる。

苦労しながらも私を育ててくれた母の人生観や価値観に触れ、人それぞれでいいんだと実感する。このたわいもない話を聞く時間が愛おしくてたまらない。