ここ数年で老人力がついたなあ、と思うことが多くなりました。
一つは視力。視力検査では両眼1.2なので、立派なものなのですが、近くも遠くも見えにくい。離せばピントは合うけど、小さくて見えない。近づければぼやける。シャンプーとか食品とかのパッケージはなぜあんな小さい字なのか。なぜ若者の作った文書の文字は豆粒みたいなのか。針に糸を通すお助けグッズも、そもそもそれが針穴に通らないというオチつき。針に糸を通すのはもはや勘だけが頼り(でも意外といける)。老眼になっても老眼鏡をかければ、元通り見えるんでしょ?くらいに思っていた昔の私に、ばかもんと言いたい。
もう一つはいつもどこかが痛いとか疲れが取れないとか、すっきり快調な日はほとんどないこと。「ちょっとした不調、症状でも新型コロナの場合があります」と仕事でよく説明するけど、自分自身は「いつも不調なので毎日該当しますが、どうすれば…?」という状態。たまにすっきり体が軽いと、心から「健康って素晴らしい!!」と思えます。
ほかにもいろいろありますが、そういうもろもろを「老人力がついた」とポジティブに受け止めています。
まず、日々新しい体験です。老眼の世界、手すりのくれる安心感など、若いときはわからなかったことを体験できます。膝や腰が痛い人の日々とはどういうものか、ユニバーサルデザインとか、理解が深まります。本を読んでもディティールを忘れているので、新鮮な気持ちで再読できます。
人目とか細かいことも気にならなくなります。「その人が私の人生の責任を取ってくれるわけじゃないし」と思えるようになると、がんじがらめの呪縛が解けて自由になっていく感じがします。若いときは絶対しなかったことを、今は気軽にやってみようと思えるのが、一番うれしい変化です。
失ったものは返らないというシンプルな原則の重みが20代のころより確実に理解できてきます。
年を重ねると、視界はぼやけるけど人生の解像度はあがり、いろいろ失うものはあるけどハッピーが増えることもある、というお話でした。
- 老人力(ろうじんりょく) … 赤瀬川原平が1997年に提唱した概念。これは「物忘れが激しくなった」など老化による衰えというマイナス思考を「老人力がついてきた」というプラス思考へ転換する逆転の発想である。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』