「山菜を剥く」

 SNSがこれだけ爆発的に利用されることになった理由は、共感することがいかにコミュニケーションを取る上で大事かということを実感できるツールだったからではないでしょうか。


 私もいろいろな場所でまちづくりの話などをさせていただく機会がありますが、聴いてくださっている人たちの表情を見ていると、どこで共感を示してくれたかということがよくわかる瞬間があります。その多くは、まちに住む人が発した生の声やエピソードを紹介する場面においてです。そのリアリティが伝えたい大切なことをしっかり裏打ちしてくれているように感じるのです。つまり伝えたいと思っている重要なことを、ただ箇条書きのように話しても聴き手の頭の中にはストレートに入ってはいきませんので、その前に聴き手の興味関心をそそる現場での出来事を挟んであげるのが、理解を促す上で効果的だといえます。


 このことからもわかるように情報発信をする場合は、現場のリアリティをできる限り鮮度を保った状態でお伝えすることが重要だと感じています。
 例えば印刷物に写真を掲載する場合でも、まちづくりを主題にしている場合は、風景カレンダーのような非現実的な写真を用いるのではなく、素人写真であってもそこで働く人の表情が上手く捉えられたものや、何気ない住民の暮らしぶりがわかるような写真を添えることで共感を得られやすくなります。


 これはキャッチコピーでも同様の効果が得られます。多くの人は何かイベントを行う際の告知チラシ等に、そのイベント名を一番大きく表示したがります。しかしまず共感を得たいと思うなら、人の感性をくすぐる口語を選んでイベント名よりも大きく配置していく方がずっと効果的であることが多いのです。


 これからの情報発信は理論より感性です。一つの媒体で全ての内容を伝えようなどと思わず、まずはどうやったら伝えたいターゲットの共感を得ることができるかを考えることが大切なのだと思っています。