わたしたち「むらかみ地域医療サポートセンターはぐ」は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング、人生会議)の取り組みを支えていきたいと考えています。その背景と動機をまとめました。
親しい家族のいない一人暮らし、認知症で判断力がゆらぎつつあるとき、命にかかわる重い病気のとき、命にかかわる事故や急病のとき・・・誰もがなりうる人生の通りみちにおいて、自分はどのような治療や介護を望むのか、どの場所で最期を迎えたいか、誰に判断をゆだねたいか、理想の最期など、あらかじめ考え、信頼できる人に話し、共有して残しておくことができると、本人も周りも納得し安心し、その際には治療や介護や最期の時のお世話をすることができます。
高齢者一人や老夫婦のみという世帯が多くなってきている現在、望む最期についての意思を明らかにして信頼できる人に託す作業はなかなか進んでいないと思われています。事故や急病、重篤な病気の場合の最期の在り方についても家族で深く話し合われているでしょうか。
現役世代の急減により、介護・福祉における人手不足、社会保障費のさらなる増大が懸念されている2040年、村上岩船地域でも医師、看護師、介護職の不足はより深刻な課題になります。また、若年層にも介護負担が及ぶヤングケアラーの存在も問題視されています。また、本人の意思が明確でないまま家族が決断を迫られると、家族は後々、その決断が正しかったのかどうか悩むことも多いそうです。限られた医療・介護資源・人的資源が、望まない医療・介護に費やされることのないためや、親しい人の心理的負担を軽くするためにも各自の意思表明は大切です。
では、普段の暮らしの中でこういった話が出来るかというと、「死」について及んでしまうために「縁起でもない話」として触れようとしなかったり、切り出されてもどのように話をつないでよいか分からなかったりして、思うような話ができないままになってしまいます。また、若い方にとっては「死」「老」「病」は遠いものと思っていることでしょう。
私たちは、このテーマについて、考え、話し、共有して残す取り組みが、繰り返し行われていくように、高齢の方から若い方まで住民がみんなで分かっていける仕組みが必要であると考えました。このテーマは、医療・介護にまつわることが多くなりますが、生き方や望みなど価値観も明らかになるものであり、普段は関わることのない職種や年齢層が触れ合うことによっても視野が広がります。多様な人のつながりは重要であり、病院や施設が単独で取り組むよりも私たちのような多様な集まりである住民組織が取り組むことに意味があります。
「死」「老」「病」を自然に話し合える文化を育て、各々がこれまで大切にしてきたこと・これからも大事にしたいこと・いのちに対する考え方を明らかにしていけることで、人生に深みをもたらすものになっていくことを願っています。
(この事業について、新潟ろうきん福祉財団2022年度NPO等地域活動団体助成を受けました。)
