伝統的建造物群保存地区に指定されている関宿のまちなみ

 仕事柄全国各地に行くことが多い人間です。以前は仕事が終わればとんぼ返りで帰っていたのですが、最近はせっかくそこまで行ったのだからと、時間が許す限りもう一泊して観光を楽しんでから帰るなんていうことも多くなってきました。まぁ、普段から自由業みたいな働き方をしている者ですから、こういうことができるんですけどね。
 こういう時のほとんどは単独行動ですから、自ずと一人旅のスタイルになります。最初の頃はそれが何となく物足りなく、旅は一緒に楽しんでくれる人と出かけたいと思っていたのですが、それも最初の内だけで、だんだんと一人旅の魅力もわかってくるようになりました。
 その一人旅にはまった場所が三重県亀山市の関宿です。あれはもう10年以上前のことになりますが、鈴鹿市での仕事の合間に立ち寄りました。
 私は以前から全国にある伝統的建造物群保存地区には興味があって、全国に点在する127地区は全部見て回りたいと思っていましたので、鈴鹿市の近くにないかなと思って探してみると、あるじゃないですか、恐ろしくすばらしい町並みが!(写真参照)
 それが旧東海道五十三次47番目の宿場町「関宿」です。ここはまるで映画のセットに舞い込んだかのような町並みが1.8㎞にも渡って続いていました。
 私は東の追分から西の追分まで歩いて往復し、その間、様々なお店やお寺に入り、この町並みの景観や風情を堪能していました。

 そうこうしているうちに夕暮れが迫ってきたので、私は縄のれんのかかった一件の居酒屋を見つけてそこに入りました。
 入ったときはまだ客が少なかったので、格子越しに町並みがよく見えるカウンター席に座り、奥にいた女将さんに酒と肴を注文しました。
 女将さんはとても愛想のいい方で、この関宿の魅力をたくさん話してくれました。もうこれ以上はできないという「関の山」という言葉も、この町から生まれたことを教えてくれました。その内容を簡単に説明すると、ここでいう「山」というのは関の祭礼で引き回す山車のことで、「もうこれ以上立派な山車はつくれない」といわれたところからこの言葉が生まれたのだそうです。

 そんな話を聞いている内に常連さんらしきお客さんが何人か入って来られ、私と女将との会話に順次加わるようになってきました。
 最初に後ろのボックス席にいた初老のご夫妻が関宿の歴史や変遷を話してくださり、その後でカウンターにやってきた女性が、お隣の忍者の里(伊賀・甲賀)の隠れた観光ルートを紹介してくれました。 またそれ以外のお客さんからも地元の方でないとわからないようなグルメ情報やおみやげ情報等をたっぷり聞かせていただき、店中が盛り上がる実に楽しいひとときを味わいました。当然、お酒もがんがん進みます。
 大満足して私はそのお店と関宿に別れを告げ、会話の余韻を楽しみながら駅までゆっくりと歩いて戻りました。

 あれ以来、出張ついでに観光をする機会はどんどん増えていきました。
 旅はいろんな人に出会えるチャンスであり、そこから予期せぬ楽しいハプニングが生まれてくる可能性を秘めています。また自分を見つめ直すいい機会にもなりますよね。
 コロナ禍も明けたことですし、さぁ、みんな旅に出ましょう〜!